1889年頃 Bebe Steiner

大粒の涙が彼女の蒼白い頬をつたわる。 僕もすすり泣きを抑 えることができない… 冷たくなっていく少女が僕には彼女に 思える。雪の中でどんどん白くなっていくイザベルの姿が見え るようだ。彼女を助けようとハンモックに駆けよると イザベ ルはそっと僕を押し 涙で曇った声で「待って」と言い 最後 の行を読み続ける。« 少女が見た美しいものや 少女がこの新 年の日におばあさんと一緒に入った素晴らしい世界の事は 誰 も知らない… » 泣きながらも イザベルが笑いだした。「何 て子供なの!」彼女が言う。「これは唯のお話じゃないの、本 当の事じゃないでしょう。 泣くなんて恥ずかしくないの!」「でも君だって 泣いているじゃないか?」-「私は女の子よ。 それに、笑うような時に泣くのって好きなの。」 突然、彼女 は話を中断した。「あっ パパだわ。」イザベルはポケットか ら小さなレースのハンカチを取り出し、目を拭いている。僕も チェックのハンカチで鼻をかんだ 。
Les temps secret Marcel Pagnol (訳 市川真紀子)

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